異能の人材が語る危機への対処法とは?

時計業界で異能の人材を挙げろと言われたら、誰しもが彼の名前を挙げるに違いない。それがウブロCEOのジャン=クロード・ビバーだ。彼は事実上ブランパンの創業者であり(1982年)、後にはウブロの経営を立て直した。加えて言うと、時計メーカーの多くが行っているマーケティング手法も、その多くは彼の考え出したものだ。商品開発に深くかかわるだけでなく、マーケティングにも長じた万能の人材。そんな彼は、金やスイスフランの高騰といった環境の変化を、どう見ているのだろうか。

ビバー氏(以下B):「スイスフランと金の高騰は今に始まったことではありません。30年以上前からでしょう。スイス時計業界はそんな環境下でずっと凌いできています。事実、私がこの業界に入った35年前は1ドル約4スイスフランでしたが、現在では1ドル約0.9フランです。スイス時計業界全体は常にそのような状況で、生産性、革新性、品質やサービス、そして創造性を低下させることなく邁進し続けています」

ビバー氏の語るとおりだ。多くの人々は日本のクオーツがスイスの時計業界を壊滅させた、と考えている。しかし70年代後半にスイスの時計産業が傾いた理由は、まさにスイスフランと金が高騰したためでもあった。ベトナム戦争の結果、ドルが変動相場制に変わり、それがスイスの時計業界を圧迫したのである。対してスイスの時計業界は、スイス・メイドの基準を厳格化(内蔵するムーブがスイス製、あるいは組み立てがスイス国内で行われる、など)することで、スイス製であることにブランド価値をもたせようと考えた。しかし、スイスフランが高騰すると、価格を抑えるため外国製の部品を使う必要があるのではないか?